まず動画で音を聴く
国内正規代理店のオカダインターナショナルが公開している演奏動画です。菰口雄矢さんがAM4だけで弾いています。仕様を読む前に、まずこれを聴いてください。
Fractalの現行ラインナップの中でどこにいるか
Fractalは製品が多くて分かりにくいので、先に全体を並べます。国内正規代理店(オカダインターナショナル)の価格です。
| 製品 | 形状 | フットスイッチ | 国内価格(税込) |
|---|---|---|---|
| AM4 | コンパクト・フロア | 4 | ¥176,000 |
| VP4 | コンパクト・フロア(エフェクト専用、アンプ無し) | 4 | ¥176,000 |
| FM3 MARK II Turbo | フロア | 3 | ¥242,000 |
| FM9 MARK II Turbo | フロア | 9 | ¥385,000 |
| Axe-Fx III MARK II Turbo | ラック(フットコントローラー別売) | — | ¥484,000 |
AM4はFM3より6万6千円安い。しかもアルゴリズムはAxe-Fx IIIと同じです。以前は「Fractalに入るならFM3から」でしたが、その入口が一段下に下りてきた形です。
初めてFractalを試す人には、これ一択でいい
FM3やFM9との違いは、主にフットスイッチの数と同時処理できる量です。音の質そのものは同じ系統。つまり「Fractalの音が自分に合うかどうか」を確かめる目的なら、AM4で十分に分かります。合わなければ17万円で済み、合えばそのままメイン機として使えます。
逆に言うと、ライブでたくさんの音色を足で切り替える人、複雑なルーティングを組みたい人は、最初からFM9を見たほうがいいです。AM4は4スイッチなので、プリセット×シーンの組み方に工夫が要ります。
スペックで見る:中身はAxe-Fx III
- アンプモデル 240種以上 — Axe-Fx IIIと同じモデル群
- Dyna-Cabs 45種以上 — マイクの位置を動かせるキャビネットシミュレーション
- エフェクト 325種以上 — 歪み系77種以上、リバーブ79種以上を含む
- ユーザーIR対応 — UltraRes と標準IRフォーマットを読み込める
- プリセット104 × シーン4
- USB-C(4in/4outオーディオインターフェース、MIDI)、S/PDIF入出力
- MIDI In/Out(3.5mm)、エクスプレッションペダル×2
- 電源 9V DC 1.5A(アダプター付属)
注目してほしいのは「ユーザーIR対応」です。Dyna-Cabsが45種で足りないと感じたら、外部のIRを読み込めます。ここは後で触れるTONEXとの比較で効いてきます。
TONEX Board と比べる:キャビネットの考え方が違う
同じ価格帯の競合として、IK Multimedia TONEX Board(¥198,000)があります。AM4のほうが2万2千円安い。ただし、この2台はキャビネットに対する考え方がまったく違うので、単純な優劣では語れません。
| Fractal AM4 | TONEX Board | |
|---|---|---|
| 方式 | モデリング(回路を計算で再現) | キャプチャ(実機の音をAIで写し取る) |
| アンプ | 240種以上のモデル | 付属 Tone Model 2,000種(アンプ+キャビ込み) |
| キャビネット | Dyna-Cabs 45種以上+ユーザーIR | Tone Modelに含まれる+ユーザーIR |
| キャビの自由度 | マイク位置・距離をあとから動かせる | キャプチャした時点の音で固定 |
| エフェクト | 325種以上 | 76種 |
| エフェクトループ | なし(VP4と組む想定) | ステレオ Send/Return あり |
| 国内価格 | ¥176,000 | ¥198,000 |
「キャビの種類が少ない」は、半分正しい
私の第一印象は「TONEXと比べると、リアルなキャビネットシミュレーションの種類が少ない」でした。数だけ見ればそのとおりです。TONEXはアンプとキャビをセットで写し取ったTone Modelが2,000種付属し、ToneNETからさらに落とせます。対してAM4のDyna-Cabsは45種。
ただし、Dyna-Cabsは1つのキャビの中でマイクの位置と距離を動かせる仕組みです。TONEXのTone Modelは「あるマイク位置で録った1枚の写真」なのに対して、Dyna-Cabsは「キャビの前に自分でマイクを立てる」感覚に近い。45種でも、1種あたりの表情はTONEXの1モデルよりずっと広いです。そしてどちらもユーザーIRを読めるので、最終的な選択肢の幅はほぼ並びます。
どっちを選ぶか
「この実機のこの音」を欲しい人はTONEX、「自分でアンプとキャビを組んで音を作りたい人」はAM4。TONEXは写真、Fractalは絵の具、という違いです。エフェクトの数と質はAM4が圧倒的なので、1台で完結させたいならAM4のほうが向いています。逆に、TONEX Boardにはエフェクトループがあり、AM4にはありません。外部ペダルを挟みたい人はここも見てください。
海外の評価と、指摘されている点
海外では「世界クラスのモデリングが700ドル以下でペダルボードに載る」という受け止め方が主流で、MusicRadarも「プロのステージで通用する音の幅と堅牢さ」と評価しています。
一方で、「FM3を待ったほうがいい」という意見も一定数あります。4スイッチでは足りない、同時に使えるブロック数に制限がある、という理由です。ここは使い方次第で、シーンを使いこなせるかどうかで評価が変わります。
- エフェクトループが無い。外部ペダルを挟むなら別途VP4などが必要
- 4フットスイッチなので、ライブで多くの音色を足で切り替える用途には向かない
- Fractalの操作体系は独特で、最初の1週間は設定に時間を取られる(Fractal共通)
この記事は実機未使用の状態で書いています。仕様は公式サイトと国内正規代理店の情報、評価は海外レビューと代理店の公開動画を参照したものです。TONEXについての記述は、TONEX Pedalを実際に使っている経験に基づいています。
こんな人に
AM4がいちばん刺さるのは、「Fractalの音は気になっていたけど、24万円のFM3は踏み切れなかった」という人です。17万円で本物のFractalに入れる。この差は大きい。
もう1つは、自分で音を組み立てるのが好きな人。240のアンプと45のキャビとマイク位置を組み合わせる作業自体を楽しめる人にとって、AM4は長く遊べる機材です。逆に「設定はしたくない、鳴らしてすぐ良い音が欲しい」という人には、キャプチャ方式のTONEXのほうが合います。
結論
Axe-Fx IIIと同じ音を、Fractal史上最安の17万6千円で。初めてFractalを試す人には現状これ一択です。キャビの「数」ではTONEXに負けますが、Dyna-Cabsはマイク位置を動かせる分、1種あたりの幅が広い。エフェクトループが無いので、外部ペダル前提の人は注意。
良かった点
- Axe-Fx IIIと同じコアアルゴリズム。音の系統は上位機と同じ
- 現行Fractalで最安・最小。FM3より6万6千円安い
- アンプ240種以上、エフェクト325種以上と、内容は上位機並み
- Dyna-Cabsはマイク位置・距離を動かせる。ユーザーIRも読める
- USB 4in/4outオーディオインターフェース内蔵で宅録にもそのまま使える
気になった点
- キャビネットの「数」は45種で、TONEXのTone Model 2,000種と比べると少ない
- エフェクトループが無い。外部ペダルを挟むならVP4などが別途要る
- 4フットスイッチ。多くの音色を足で切り替える用途には不足
- Fractal共通の操作体系に慣れるまで時間がかかる
向いている人:初めてFractalを試す人/自分でアンプとキャビを組み立てるのが好きな人/宅録でも使いたい人
向かない人:外部ペダルをループに挟みたい人/ライブで多くの音色を足で切り替える人/設定せずにすぐ良い音が欲しい人(→TONEX)